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[座談会]

2050年GHG排出ゼロに向けて

川崎汽船株式会社

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Introduction

企業の環境保全への取り組みは、近年様々に進展しています。

なかでも川崎汽船は、ISO14001に基づいた独自の環境マネジメントシステム(EMS)を“K”LINEグループ全体として推進するために、「DRIVE GREEN NETWORK」(以下DGN)を構築して一元的に管理し、機能的に運用・実践している点で注目されています。

今回は、同社でサステナビリティ・環境経営推進の旗振り役であるお2人とともにDNVのテクニカルアセッサーを交えて今後の課題や期待について座談会形式で語っていただきました。[1/2]

取材参加メンバー

(以下、文中では敬称略)

川崎汽船株式会社
北村午郎 氏

サステナビリティ・環境経営推進・IR・広報グループ長

川崎汽船株式会社
秋庭孝安 氏

サステナビリティ・環境経営推進・IR・広報グループ 環境経営推進チーム長

DNVビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社
川崎巳喜男

テクニカルアセッサー

-1-

「“K”LINE環境ビジョン2050」策定

――グループ全体でDGNの構築に取り組まれた背景や経緯について教えてください。

(北村)
弊社では、2001年にグループ全体で遵守される「グループ企業行動憲章」を制定し、その後、ISO14001に基づく「環境マネジメントシステム(EMS)」を導入、運営を開始しました。

この活動を続けていくなか、2015年に「“K”LINE環境ビジョン2050」を策定しました。これは、2030年さらには2050年に向けての環境目標と具体的な行動を示したもので、2021年には「2050年GHG(温室効果ガス)排出ネットゼロに挑戦」という高い目標を設定しています。目標を達成するには、社内やグループ会社の協力が不可欠で、目的を共有し、活動をシンクロさせるためのプラットフォームとしてDGNを構築しました。

グループ会社には、国内外に海運会社や代理店、港湾・倉庫会社、陸運会社など、様々な業種の会社があります。ただ、アドミニストレーションの負担の問題もあり、ISOを自社で取得・運用できる会社は限定されてきます。そのように業種や状態の異なる人たちが同じ目標を目指して活動できるようにと設けられたのが、このDGNというプラットフォームです。

(秋庭)
DGNには現在国内外の42社が参加していますが、ISO14001の取得状況によって4つのカテゴリーに分けられます。1つは環境マネジメントに関する第三者認証を取っていない企業群、2つ目はISO14001以外の認証を取得している企業群、3つ目はISO14001を取得しているけれども弊社のEMSとは別に独自で取得した企業群、4つ目は弊社のEMS内でISO14001を取得した企業群です。

(川崎)
監査の側から見ますと、業種が多岐に渡っていてまとまりにくいのに、DGNというプラットフォームを活用してうまくまとめられている印象があります。

(北村)
ISO14001を取得するのが理想的なのですが、各社事情が違います。そこに業務負担をかけられない会社でも参加できるような仕組みです。

――DGNの運用はいつからですか?

(北村)
2017年からです。前年の2016年、最先端の技術を結集して省エネと環境保全を追求した自動車運搬船「DRIVE GREEN HIGHWAY」が竣工しました。これは、窒素酸化物を50%以上、硫黄酸化物を90%以上削減することなどを可能にした、当時の次世代環境対応フラッグシップです。 「DRIVE GREEN NETWORK(DGN)」は、このフラッグシップの志を受け継ごうとの願いを込めて名付けました。

――DGNを構築するにあたり、一番苦労された点は何でしょう?

(北村)
知識のレベルや環境問題と向き合う熱量など、会社によって違いがあります。そういう違いを乗り超えて同じひとつの目標に向かって行動するには、相当なコミュニケーションが必要です。一堂に集まって共有の時間を持ち、できるだけ多くの情報を還流させることに注力しています。グループ全体の一体感を醸成し、情報レベルの統一化を図ることが、最も苦労している点と言えるでしょうか。

――グループ会社内の他社の取り組みが明らかになるのでグループ内他社での良い取り組みをすぐに取り入れることができるということですね。

北村 午郎氏

毎年持続可能な取り組みを表彰する「“K”LINE Group 環境アワード」設立

秋庭 孝安氏

――「“K”LINE Group 環境アワード」についてお聞かせ下さい。グループ会社も含めた形で互いの取り組みを共有して、切磋琢磨するのですね。

(北村)
そうなんです。2015年に「“K”LINE Group 環境アワード」を設けました。年1回、持続可能な事業活動に貢献している取り組みを募集し、表彰しています。毎年たくさんの応募があって、次年度のモチベーションになり、グループ会社全体の目標にもなっています。

(川崎)
素晴らしいのは、日本だけでなく海外の拠点も入れたグループ環境連絡会、つまり「アニュアルレビュー(年次報告)」を英語でおこなう会議体を持っておられる点です。発表ではグループ内の好事例がいろいろ登場します。監査をしてると、「前回の発表にあったA社の事例をまねて我々のなかでかみ砕き、良い結果につなげました」といった発言があります。積極的な行動がグローバルレベルでも広がっています。

(秋庭)
当初海外メンバーは少なかったんです。DGNを始めてからどんどん増えて、日本語のみでやっていた「アニュアルレビュー」の会議を日英両言語に切り替え、情報をシェアするようになりました。

(川崎)
初め海外は2~3社でしたか。それが今は海外6割に対して国内4割ぐらいですか?

(秋庭)
そうですね。海外の方が多いです。

――「アニュアルレビュー」は、東京本社の考え方を海外の拠点にも伝える良い機会になっているのですね。

(北村)
はい。会議は、日本国内、アジア・ヨーロッパ、北米・南米の3つの時間帯に分けて実施しています。本社の「環境ビジョン」の内容をまず理解していただき、グループ会社の取り組みを横展開して説明。フィードバックを受けたらまた横展開し、グループ全体としてのレベルアップを目指しています。

(秋庭)
個々の会社には内部監査あるいは外部監査で対応しつつ本社の考え方を伝えていますが、全体としては「アニュアルレビュー」のグループ環境連絡会で考え方を共有しています。

(川崎)
1年のスケジュールはだいたいですが、7月頃に本社からのリクエストで計画(Plan)を立てて、実行(Do)に移します。12月頃までに、いったん内部監査のチェック(Check)があり、評価機関であるDNVの評価とあわせて、そのあとの「アニュアルレビュー」に臨み、改善(Act)へとつなげるという具合に、PDCAサイクルをきれいに回されています。監査からは、それをしっかりやられているのがわかるので、結果につながっているのでしょう。DGNというグループ共通のプラットフォームを活かしきっておられます。

――「海外と日本、メンバーが互いに刺激を受けてこんな新しい活動を始めたという事例はありますか?

(北村)
前回の「環境アワード」の例を挙げますと、特に欧州の方々は環境問題に敏感で、斬新なアイデアが出ていました。たとえば、ギブアウェイを巣箱に変えたという活動はなんともヨーロッパっぽい。日本では思いつかない発想で、面白いと思いました。

(秋庭)
それ、虫のための巣箱でした(笑)。

(北村)
通勤手段を自転車に変えようとのキャンペーンで、会社が従業員に自転車をリースした事例もありました。様々なアイデアが登場するものだなあと、素直に感心しています。一巡すると活動のマンネリ化が懸念されましたが、そんなことはなく、斬新なアイデアが次々に出てきています。

(川崎) 監査員として見ていますと、現場の日々の努力が伝わってきます。DGNは「環境保全を目指す」という川崎汽船の精神を表す標語のようになっていて、各社の自主的活動が多く見られます。生物多様性まで踏み込んでいたり、海洋プラスチックごみを減らす活動につなげたり……。DGNには自主的活動を助長する力があるとの印象がありますが、いかがでしょうか?

(北村)
ご指摘の通りと思います。活動を通じてグループ各社が独自に環境意識を育んでいる点は成果のひとつです。

(川崎)
斬新なアイデアだけでなく、ベーシックな活動もされていますよね。たとえば、タグボートでも船尾形が違うと波の抵抗が変わるので、利用方法に応じて最適化し変えて燃料消費を抑えている事例がありました。データを拝見すると改善につながっていることがわかります。一つひとつの積み重ねが今につながっているのですね。

(北村)
弊社単体では、お客様の荷物をお預かりして船に積み、A地点からB地点まで運ぶのが商売です。事故を起こさず安全運航に努め、環境にもやさしく運ぶのが基本。昨今はCO2排出削減や新燃料への転換、効率的な運航の強化などに努めていますし、グループ会社共通では、横串を刺すようにして環境への意識を高める活動を続けているわけです。


<下へ続く>

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