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「伝統の食文化」と「最新の食品安全規格」が融合

老舗製茶企業 共栄製茶㈱がFSSC22000認証取得

日本茶・紅茶・コーヒー製品などの製造・販売を主業務とする共栄製茶㈱(前河司社長、本社所在地・大阪市北区西天満)は、2006年にISO9001認証を取得した他、2013年に宇治東山工場と宇治久保工場でFSSC22000認証、宇治南商品センターでISO22000認証を取得するなど、高品質かつ安全・安心の製品実現を妥協なく追及している(審査登録機関はDNV GLビジネス・アシュアランス・ジャパン㈱)。
 同社は天保7年(1836年)に京都・宇治小倉で「森半製茶所」として創業、170余年の伝統を誇る老舗企業で、現在も「森半」のブランドで親しまれている。本稿では、日本を代表する食文化の一つである「お茶」と、世界で最も新しい食品安全マネジメントシステムの一つである「FSSC22000」が、どのような考え方で融合されたのか、共栄製茶の森下康弘会長らにうかがった。
 また、2014年10月、DNV GLビジネス・アシュアランスのステファノ・クレア副社長(フード&ビバレッジ・グローバルディレクター)、DNV GLビジネス・アシュアランス・ジャパン㈱の前田直樹社長らが、共栄製茶を訪問して森下会長や前河司社長らと情報交流を行った他、宇治東山工場や宇治久保工場、宇治久保工場に隣接する母屋(茶室)の見学などを行った。本号では、共栄製茶とDNV GLグループによる交流や現地視察などの様子も合わせて紹介する。(編集部)

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細断された茶葉を石臼で挽いて、抹茶に加工する。工場内では100台を超える石臼が稼働(左上)
有機JAS用の石臼は、透明な板で仕切られた専用の場所に設置されている(右上)
篩の網目に破れがないかはOPRPとして管理。乾燥品を取り扱うので洗浄時に水が使えない。清掃は主に吸引とアルコールによる拭き上げ(左下)
工場に入室する前には個人衛生管理を徹底(右下)

――文書など作成などでの苦労はありましたか。
立開 ISO9001関連の文書類が、ISO22000を構築する際のベースとして利用することができました。ただし、中には白紙の状態に戻して作成し直した文書も多くあります。(FSSC22000の)キックオフから認証取得までに約10カ月を費やしましたが、基本的には「既存の文書をいかに利用するか」「既存の文書から、いかに紐づけしていくか?」ということを考えながら文書類は作成しました。
 ただし、「現場での技術」は人についてくるもの(個人の経験によって養われるもの)が多いのも事実です。特に当社の場合は、人手を介する作業が多く、「個人の技術に依存する作業」もあります。そうした技術も、可能な限りマニュアル化できれば――とは考えていますが、現場に対して「マニュアルに従った作業をしなさい」といったような押し付けをすると、「自分たちの技術を信用していないのか?」といった反感を招く恐れもあります。そうした現場の心理にも配慮しないと、「伝統的な技法」と「マネジメントシステム」を融合させることは難しいと思います。

PRPは施設ごとに異なる――
現場の実態に合わせた継続的改善を

――FSSC22000を構築したことで、現場における変化や効果は見られましたか。
細野 HACCPやFSSC22000では、ハザード分析を実施することで、現場作業者が「どの工程で、どのようなハザードが、どのようなリスクをもたらすのか?」「ハザードを予防するために、現場ではどのような行動をとらなければならないか?」といったことを自主的に考えるようになります。そのため、衛生管理に対する意識が非常に高くなったのではないでしょうか。  特に異物に対する意識が大きく変わったと思います。もともと異物混入への意識は持っていましたが、異物予防に対する知識や意識がさらに深まったと感じています。例えば、オペレーションPRP(OPRP)として『篩(ふるい)の網目に破れなどがないか、作業前および作業後に確認する』という作業が設定されています。こうした仕組みがあることも、異物に対する意識を高いレベルで維持することにつながっているのではないでしょうか。

立開 FSSC22000認証を取得して以降、二者監査の回数は減りましたね。以前は「取引先によって、(二者監査で)注意しているポイントが違うな」「いろいろな監査書式を使っているな」といったことを感じる場面もあったので、二者監査の負担が軽減されたことは助かっています。ただし、その分、内部監査を充実させていきたいと思います。

――フードディフェンスの取り組みについては。
立開 以前から、取引先からの要望もあったので、防犯カメラを設置したり(建屋の通路、原料倉庫で製品がむき出しになる箇所など)、入出時の記録をつけるなどの取り組みは行っていました。脅威の評価・重要管理などのソフト面は、まだまだこれからのの課題だと思っています。

――FSSC22000に関する今後の課題について。
中尾 FSSC22000を構築する際に、新たな手順やルールを設けましたが、まだ「FSSC22000の規格要求事項を、そのままルール化しただけ」と感じることがあります。運用時に「ぎこちなさ」を感じることもありますし、まだ「お仕着せのルールを運用している」という雰囲気もあります。将来的には「自分たちの実態に合わせたルール」になるよう継続的改善に努め、スムーズに運用できるようになれれば――と思います。特に、自社の実態に合ったPRPをしっかりと構築することが非常に重要であると思っています。

「お茶」は日本を代表する文化 ハラール認証など視野に消費拡大を

――和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、日本の文化に世界が注目しています。
森下 京都には「宇治茶」という知名度がきわめて高いブランドがあるので、今のところ府内のお茶業界の業績は良好といえると思います。しかしながら、消費者のライフスタイルが変化してきて、急須やティーポットを使ってお茶を飲む人は減ってきており、それに伴ってお茶の消費量も減ってきています。これは、日本だけに特有の状況ではありません。以前は、「日本と英国は、お茶(紅茶)を飲む人口が多い」といわれていましたが、英国ではティーパックが普及したことで「ティーポットでお茶を飲む人口は急速に減少し、今では3~4%になっている」といわれています。日本でも「昔は9割以上の家庭で急須を使っていたが、今では3分の1程度まで減っている」ともいわれています。そのため、新しい消費者層を開拓することや、新しいお茶の楽しみ方を考え、提案していくことも必要になるでしょう。
 最近では、アイクリームやお菓子の製造に、お茶(特に抹茶)を使用するメーカーが増えていますね。

――最後に今後の事業展開について一言お願いします。
前河 現在、ハラール認証の取得に取組んでいます(※2)。すでにマレーシア、シンガポール、インドネシアをはじめ、東南アジアを中心とする取引先から「ハラール認証を取得してほしい」という声を聞いています。海外で日本茶を取り扱っているカフェのチェーン店からも「ハラール認証がある方が、安心して売れるのですが」といった声を聞くこともあります。また、国内のホテルや航空会社などからも「ハラール認証を取得していませんか?」という問い合わせが増えてきました。  そもそも、ハラール食品を求める方々は基本的にアルコールを飲まないので、お茶には需要の可能性があるのではないでしょうか。特に、日本独特の食文化の一つである「抹茶」には、大きなビジネスチャンスがあるのではないかと期待しています。

(※2 2014年11月19日に認証取得)

――ありがとうございました。

サプライチェーン全体での連携・協働が求められる時代

10月27日、DNV GLビジネス・アシュアランスのステファノ・クレア副社長(フード&ビバレッジ・グローバルディレクター)と、DNV GLビジネス・アシュアランス・ジャパン㈱の前田直樹代表取締役社長らが、共栄製茶を訪問。森下会長や前河社長らと情報交流の場が設けられるとともに、工場の視察、「森半」の茶室見学などが行われた。

 懇談の場において、クレア氏は、最近の食品業界を取り巻く近況について解説を行い、「フードサプライチェーン全体を一貫した食品安全確保がますます重要になってきている」と強調。「消費者から食品企業に対する『健全性』の要求はますます強くなっている。とりわけ、フードサプライチェーンの『透明性』が強く求められるようになってきている。食品関連のスキャンダルがしばしば起こったことで、消費者は(食品企業に対して)安全性のみならず、倫理や社会的責任なども重視するようになってきた。地域で発生したリスクであっても(特に世界的な企業の場合は)即座に世界に広がる時代になっている。そうした背景から、食品安全の問題については、企業間の協力(例えばGFSIの取り組みのような連携)もとられている。今後、ますます『より良いサプライヤーの開拓』『より一層のサプライヤーとの協力体制』が重要視されるようになってくるであろう」と述べた。また、最近のトピックスである食品偽装(food fraud)についても言及し、「先般、欧州で発生した牛肉への馬肉混入事件などは、トレーサビリティの弱さが露呈された事例といえる。これからは、ブローカーや流通業者などのいわゆる中間業者(サプライヤーとメーカーの中間に位置する業者)も含めたトレーサビリティの確立なども重要になる」などの説明を行った。

 さらに加えて、「食品安全だけでなく、『持続可能性』も最近の大きな関心事である。世界には、持続可能性に関して高い基準を設け、サプライヤーとともに積極的に『コーポレート・シチズンシップ』(社会の一員としての企業の責任および義務を果たすこと、企業が利益の一部を社会に還元して慈善事業・文化活動・環境保全活動などを行うこと)に取り組む企業も見られる」など、これからの食品企業に求められる持続可能性や資源保護(環境影響への配慮、廃棄物の削減など)などについても触れた。また、「企業がいかに行動していくかを決めていく際、消費者と企業を結びつけて『双方向のコミュニケーション』を行うことを可能にするソーシャルメディアも大きな役割を担っている」とも指摘した。

 最後に、クレア氏は「2014年はDNV GLグループにとって創立150年という記念すべき年である。食品・飲料分野では、チャレンジすべきテーマとして『食品安全』『持続可能性』『環境影響の最小化』などを掲げている。これらは、中小規模の農業者や製造業者にも取り組んでほしいテーマである。特に『安全性』に関しては、GFSI承認規格(FSSC22000など)の第三者認証などを通じて個々の企業を支援するとともに、『食品安全を保証するフードサプライチェーンの構築』を支援していく所存である」と、DNV GLグループのサポート体制について述べた。
(月刊HACCP 2015年1月号より転載)

10月27日、共栄製茶とDNV GLグループの関係者による情報交流の場が設けられた(左上)
宇治久保工場と隣接する老舗の茶屋「森半」も訪問。森半は天保7年創業の老舗。現在は、抹茶を使用した菓子などを販売している(右上)
宇治久保工場隣接の母屋(茶室)にて。イタリアから来日したDNV GLのステファノ・クレア氏も茶道体験で日本文化を堪能(下左右)

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