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[座談会]

アンモニアCO₂
トレーサビリティ
プラットフォームの構築
-下-

株式会社IHI

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Introduction

株式会社IHIでは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けての

取り組みを進めています。その中でも燃料アンモニアの社会実装は、カーボンニュートラル燃料としての期待が高まるものとして知られています。今回はこのアンモニアの将来展望についてIHIの目指されている「燃料アンモニアのバリューチェーン構築」をテーマにビジョンを伺いました。[2/2]
※タイトルイメージ:再生可能エネルギー利用水素研究棟「そうまラボ」(福島県相馬市)

取材参加メンバー

(以下、文中では敬称略)

株式会社IHI
宮嶋俊二 様

事業開発統括本部 官民連携推進部 主幹

株式会社IHI
阿波野俊彦 様

事業開発統括本部 官民連携推進部 主幹

株式会社IHI
内田正宏 様

技術開発本部 技術基盤センター 主幹

株式会社IHI
吉野谷拓哉 様

技術開発本部 技術基盤センター
アシスタントマネージャー

DNV
田邊康一郎

サステナビリティサービス統括部
サステナビリティサービスグループ
技術・事業開発統括マネジャー

DNV
香取剛

サステナビリティサービス統括部
サステナビリティサービスグループ
シニアコンサルタント

-2-

燃料アンモニアのバリューチェーンプロジェクト

--DNV田邊 これらの取り組みを支える技術の中核である燃料アンモニアについては、今回初めてカーボンフットプリントの算定に取り組まれたとのことですが、詳しく教えて下さい。

(阿波野さん)
サプライチェーンはただ運ぶだけのイメージですが,一方でバリューチェーンは価値をつないでいくイメージを持っています。まずはその環境価値=カーボンフットプリントを定量化していくことが必要と考えました。精度の高いデータを使った客観的な算定であることが重要であると認識しています。


--DNV田邊
なるほど、バリューチェーン全体を巻き込みながら、IHIの技術力に裏付けられた製造設備の運転管理・モニタリング技術を通じて、CO2排出量を一気通貫で見える化するということですね。今回のカーボンフットプリント算定の主な対象は、水素製造(SIGC)、アンモニア合成、及びアンモニア燃焼(ともに横浜事業所)ですが、横浜事業所での取り組みについても教えていただけますでしょうか。


(吉野谷さん)
アンモニア合成自体は歴史も古く,従来からある技術ですが,製造の過程で使用するエネルギーは電力のみなので再エネとの相性が良いんです。IHIの特徴は、再エネの課題となっている発生電力量の変動と,需要側,すなわち水電解による電力消費を、様々な状況に合わせて機動的にバランスさせるシステムとしてパッケージ化する計画です。

(内田さん)
アンモニアの燃焼についてご説明すると、現在,IHI横浜事業所で試験中のガスタービンは電気事業法に基づく設備で、この規模のアンモニア燃焼用ガスタービンとしては国内唯一のものです。アンモニアの専焼も可能で, 理論的にはCO2排出量をゼロにできます。今後は,ガスタービンの大型化や,液体アンモニア100%燃焼ガスタービンの実用化に向けた取り組みを進めていきます。


--DNV香取
従来の技術を活用しつつ、燃料アンモニアの脱炭素エネルギーとしての可能性を高める開発が鋭意進んでいるという印象です。


(阿波野さん)
IHIはこれまで「使う」技術を培ってきました。その中で得られた知見をもとに,脱炭素燃料を活用する技術を構築しています。今まで燃料として使われなかったアンモニアを軸に,新たにバリューチェーンとして構築することはチャレンジであると思っていますが,お客様に環境価値を一緒に届けることが何よりも重要なミッションであると考えています。

吉野谷拓哉さん

燃料アンモニアにおける課題と今後の方向について

--DNV田邊 燃料アンモニアにおける課題の一つとして、グリーン電力と非グリーン電力が混在している状況の中で、低CO₂排出という価値を燃料アンモニアの環境価値全体につなげるために、IHIとしてこれをどのように解決することを考えていますか?

(宮嶋さん)
まず,混在している状況を正確に把握できることが重要です。この状況を数値的に把握することで違いを明確にし,燃料の価値をしっかりと区別して利用者様に届けることが,燃料アンモニアの利用と普及を後押しすると考えています。


--DNV香取
燃料をどのように区別していくのでしょうか?


(阿波野さん)
たとえば,SIGCでは、自立太陽光発電の電力と系統電力からの電力を使い分けながらアンモニアを製造するプロジェクトが既に進んでいます。このプロジェクトを通して,プラットフォームを構築するための基礎的な技術やデータが蓄積されつつあります。


--DNV田邊
トレーサビリティ管理については、特にマスバランス方式によって経済合理性のある仕組みを検討しているとお聞きしています。


(阿波野さん)
マスバランス方式でアンモニアを出荷するために必要になるのがアンモニアの識別管理です。通常のCO2排出量の算定・管理方法では、製造されたアンモニアの総量に対してどれくらいのCO2の量が含まれているのか,詳細はわかりませんが、アンモニアの識別管理を行うことで、「通常の製造工程と比較してCO2が何%含まれるアンモニアが○○トン、CO2が全く含まれないアンモニアが××トン」のように,定量的な識別・管理を行うことが出来るようになります。

このためには、アンモニアの製造プロセスにおいて,単位時間当たりに使用される再エネの割合を細かく記録し、製造されたアンモニアをデジタル上でパッキング(算定・記録)する技術が必要となります。 今回の実証では、SIGCや横浜工場において、設備の稼働データを収集・蓄積するIHIの既存の仕組みに加え、それらのデータを活用してアンモニアのCO2排出量の算定とアンモニアの識別管理を行うことが可能な「アンモニアCO2トレーサビリティプラットフォーム」 を新たに開発し、アンモニア製造におけるCO排出量の精緻な管理を実現しています。


--DNV田邊
なるほど。全ての運転管理の情報・データが自動的にアグリゲート(集約とバランスコントロール)されるということですね。


(阿波野さん)
また、本プラットフォームでは情報の信頼性を担保するため、ブロックチェーン技術を採用しています。ブロックチェーン技術とは、取引記録を暗号技術を用いて分散的に処理・記録する仕組みのことで、我々のプラットフォームではこの技術を用いて、収集・積算・統合されたデータを改ざんが困難かつ第三者が検証可能な形で記録しています。このようにすることで、データの透明性や信頼性の向上に寄与しています。

内田正宏さん

--DNV香取
データの改ざん防止も図られることで、堅牢なデータ管理によってデータそのものに信頼性をもたせられるということですね。




(宮嶋さん)
信頼性を確保するために何が必要かについてDNVの皆様にアドバイスを頂きながら,システムを検証したことで,アンモニアの普及にむけたバリューチェーンの基礎が整ったと理解しています。今後はパートナー企業にもご協力頂きながら,このシステムのスケールアップを繰り返していく予定です。


--DNV田邊
環境負荷低減に貢献するアンモニアバリューチェーンの構築は、世界でも先進的な取組みであると思います。新たな算定・モニタリング手法のPoC(概念実証)を繰り返し、またそれを検証していくことが今後の課題ですね。


(宮嶋さん)
将来のサスティナブルな燃料として期待されるアンモニアの本格的な普及に備え,今から出来る準備をしっかり積み重ねておくことが重要です。そのひとつとして、環境価値の見える化は最も重要な課題のひとつであり、透明性・公平性を担保する技術が求められます。IHIでは第三者認証の重要性についても意識しており、今後のプロジェクトを進めていく上では、将来のアンモニア社会を支える様々なステークホルダーとの取組みが重要と考えています。


--DNV田邊
我々DNVも第三者評価機関としてこの取組みに共創しながら、新たな価値創出に貢献することの意義を感じました。本日は大変貴重なお話しの機会をいただきましてありがとうございました。

DNVサステナビリティサービス

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[株式会社IHI:ニュースリリース] Japanese Unit of Top Global Classification Society Helps Validate Platform Tracing Ammonia Carbon Dioxide Emissions from Production through Usage(2023/03/31)

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