Introduction
取り組みを進めています。その中でも燃料アンモニアの社会実装は、カーボンニュートラル燃料としての期待が高まるものとして知られています。今回はこのアンモニアの将来展望についてIHIの目指されている「燃料アンモニアのバリューチェーン構築」をテーマにビジョンを伺いました。[1/2]
※タイトルイメージ:再生可能エネルギー利用水素研究棟「そうまラボ」(福島県相馬市)
(以下、文中では敬称略)
事業開発統括本部 官民連携推進部 主幹
事業開発統括本部 官民連携推進部 主幹
技術開発本部 技術基盤センター 主幹
技術開発本部 技術基盤センター
アシスタントマネージャー
サステナビリティサービス統括部
サステナビリティサービスグループ
技術・事業開発統括マネジャー
サステナビリティサービス統括部
サステナビリティサービスグループ
シニアコンサルタント
--DNV田邊
皆さま、本日はお忙しいところありがとうございます。今回は、IHI様の目指されている「燃料アンモニアのバリューチェーン構築」をテーマに意見交換させていただきたいと思います。座談会形式でざっくばらんにお話しを伺いたくよろしくお願い致します。
--DNV香取
今回の座談会は、横浜事業所内の「IHIグループ横浜ラボ」を会場にご提供いただきました。まずはこのスペースの狙いについてご説明いただけますでしょうか。
(内田さん)
「IHIグループ横浜ラボ」は、社会やお客さまの課題解決や、新たな事業価値を迅速かつ効率的に創出する事を目的として2019年に開設されました。我々とお客さまが共に自由な創造力を発揮できるよう、ご覧いただいた通りオープンな環境をご用意しており、本日は座談会の会場とさせていただきました。
--DNV田邊
オープンイノベーションを通じて、共通の課題に取り組むための共創活動の場ということですね。このようなスペースでお仕事ができる皆さんが大変うらやましく思うとともに、ビジネスパートナーとの双方向の対話を促進することで価値を創出していこうというIHIの思いを強く感じとれる場と思いました。
--DNV田邊
昨今では多くの企業が、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組まれています。その中でも燃料アンモニアの社会実装は、カーボンニュートラル燃料としての期待が高まっていると思います。日本政府のGX戦略(グリーントランスフォーメーション)では重要課題の一つとも位置付けられていますが、まずはこのアンモニアの将来展望について、IHIのビジョンを教えて下さい。
(宮嶋さん)
ご指摘の通り、アンモニアは近い将来の脱炭素燃料として高い期待が寄せられる一方、根本的に燃えにくい物質であるという課題があります。これを解決すべく,IHIはアンモニア燃焼技術の開発を2010年頃にスタートし,それ以来、数々の先進的な成果を上げてきました。また、アンモニアの普及には上流から下流までを含めたバリューチェーン全体がバランスよく拡大することが重要です。IHIではバリューチェーンを構成する各ピース、即ち「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」の各々に対する様々な取り組みを,国内外のパートナー企業と共に展開しています。そしてさらに、燃料アンモニアを含めた脱炭素燃料流通の透明性や信頼性を高めるためるため,「アンモニアCO₂トレーサビリティプラットフォーム」*1を開発しました。2050年のカーボンニュートラルを担う燃料アンモニアの普及に向け、一つひとつの課題を着実に実現することを目指しています。
(阿波野さん)
IHIは、燃料アンモニアを単なる水素燃料のキャリアではなく、再生可能エネルギーを合理的に運ぶためキャリアと位置付けています。その意味では、我々の活動の目的は再エネ普及のためのエネルギートランジションであると考えています。
--DNV香取
なるほど、IHIの先進技術を活用・拡大することを基盤として、世界中のアンモニアバリューチェーンに携わるパートナーが参加可能なプラットフォームの基礎を構築したいというのは壮大な構想ですね。
--DNV田邊
一方で、IHIが一企業としてこのようなプラットフォームを構築するためには、乗り越えなければならない面もあると思うのですが、どのように進めていこうとされているんでしょうか。
(宮嶋さん)
まず、プラットフォームの基礎をしっかり創りあげるため、社外パートナーとのチーミングでシステムを構築しました。次に、このシステムを検証するために,自社のアセットを活用したデモンストレーションを実施しました。ただし、このプラットフォームが将来にわたり広く浸透するためには、プラットフォームそのものの信頼性、つまり透明性の高いCO₂排出削減の見える化を,第三者の視点で確認する必要があります。この命題に対し,このたびDNVの皆様によるご支援のもと,数々の重要なポイントに対する整合性を確認しました。さらに今後は、アンモニアの流通を担うステークホルダーの取り組みをIHIが共創してCO₂削減貢献を横繋ぎしていきたいと考えています。 そのためには、やはり、信頼性の高いデータと公平なバリューチェーンプラットフォームの構築が重要なポイントと考えています。
--DNV田邊
客観的なCO₂排出削減の見える化とステークホルダーの皆さんとの公平な取引を担保するための仕組みがポイントのようですね。
--DNV香取
燃料アンモニアの普及に向けてのお取り組みとして、まずはグリーンアンモニア製造の主要な開発拠点である「そうまIHIグリーンエネルギーセンター(SIGC)」について教えてください。
(阿波野さん)
SIGCは,福島県相馬市のご協力の下,相馬市での太陽光発電電力の地産地消実現と,地域振興・発展寄与を目的に2018年に開設し,周辺の設備と共にスマートコミュニティ事業を実施してきました。敷地面積は54,000㎡で,センター内に設置した出力1,600kW太陽光発電でつくった電力を市下水処理場等へ送っています。余剰電力は水電解水素製造装置に送り,効率よく水素を製造・貯蔵する実証事業をおこなったり,電気ボイラで作った蒸気を下水処理場に送って汚泥を乾燥させ,減容化・再資源化する実証事業を行ったりしています。
--DNV田邊
CO₂フリーの循環型地域社会の実践のために、福島県相馬市と共同事業を進めている拠点ということですね。
(宮嶋さん)
さらに,2020年9月には水素研究を推進する研究棟「そうまラボ」を開所しました。「そうまラボ」では,余剰電力で製造したCO₂フリーの水素をつかって,将来の水素・アンモニア社会を見据えた水素利用・エネルギーキャリア転換技術研究・実証試験等を実施していきます。その他にも,オープンイノベーションの場としてさまざまな研究機関や企業にも公開したり,地域の小中学校の体験学習の場としても提供させていただくなど,今後も水素やアンモニアを身近な存在にするための活動も行っていきます。
--DNV田邊
地域社会への再生可能エネルギーの有効利用、モビリティ提供、災害対応、さらには植物工場・陸上養殖などにも取り組んでおられましたね。まさに循環型社会の未来図を垣間見ることができる拠点ですね。
--DNV香取
再エネの地産地消や、コミュニティの防災機能の充実を通じて、地域主導の自律した事業モデルを創出しようという取り組みなんですね。震災を乗り越え、復興と地域経済の活性化を目指す福島にとって、大きな意義のある取り組みであると実感しました。
※1 アンモニアCO2トレーサビリティプラットフォーム