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知っておきたい「紛争鉱物」の知識とSEC最終規制への実際の対応

CSRの一環として「紛争鉱物」が注目されている。2010年7月、アメリカでは特定金属の輸出に対 して、米国証券取引委員会(SEC)へ年1回の報告義務をメーカーに課するドッド・フランク法(金 融改革法)が成立し、昨年8月に最終規制が可決された。EICC(電子業界行動規範)においても、 2010年から鉱物紛争に関するプログラムがスタートしている。

こうした世界的な動きのなか、日本 企業はどう対応すべきか。EICC認定の機関として監査を実施するDNVビジネス・アシュアランスジ ャパンの廣瀬敏樹氏(サステナビリティサービスグループCSRシニア・エキスパート/CSRオーソリ ティ)が、セミナーで解説した最終規制の概略や注目ポイントについて、そのエッセンスを紹介する。

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ステップ1――義務報告があるかどうかの判定

図1 3つのSTEPS

まず、ステップ1で「報告義務があるかどうか」 を判断する。報告義務のある対象企業は、紛争鉱物が「製品の機能」や「製品の製造」に「必要」 な場合で、さらに「製造」には製造委託契約をし て他社が製造している場合の委託元会社も含まれ る。ただ、これに該当していなければ様式SD や 紛争鉱物報告書の提出義務はない。

「製品製造または製品機能に必要」をどう判断 すればいいかというと、工具や機械設備など製造 ラインに含まれてはいても製品自体には含まれて いない場合、また触媒等のように製造には使うが 製品に含まれていない場合は除く、と考えること だ。 「微量だからいいですか」という問い合わせも 受けるが、判断のポイントは「意図的に」という点。 製品の機能や目的を維持するために意図的に必要 となれば対象となるが、純度の問題で偶然入って しまっている場合は、意図的ではないので対象に ならない。 OEM 製品についての質問も多いが、それは紛 争鉱物または派生物への影響を及ぼす程度に依存 する。例えば、仕様や具体的な構成物を指定して いる場合には、影響を及ぼすことになるので該当 すると考える。

ステップ2――DRC諸国産のものかどうかの判定

このような判断を踏まえて、実際に対象となる 鉱物があると判断した場合、次は「DRC 諸国産 のものか」を考えなくてはならない。この段階で は「合理的な原産国調査の実施」が求められる。 その調査の内容は特定されていないが、EICC CFS プログラムを通じた証明は有効と見なされ、 実務上はそれで対処しているケースも多いと思わ れる。これも、全サプライヤーからの情報供与が 必ずしも義務ではなく、重要性や管理システムと その実施度具合でケースバイケースである。ただ、 調査は誠実に実施されなくてはならないので、疑 わしいものがある場合、追加で関連会社に質問状 を送ったり、場合によっては現地調査に入ること があるかもしれない。

「合理的に信頼しうる陳述書」は、精錬所や精製所を明示し、「DRC 諸国産でない」か、「リサ イクル・スクラップであること」を明らかにする 書面で、精錬所もしくは一次サプライヤーから入 手することになる。入手するだけではなく、「状 況から判断して真実であると信じる理由があるこ と」も必要だ。例えば「業界団体が外部監査人に 監査を受けている」、「外部監査人により監査済み であることが公表されている」といったことであ る。ただこれも、すべてのサプライヤーから陳述 書を入手する必要があるわけではない。

「紛争鉱物がDRC 諸国産でない」、あるいは「リ サイクル・スクラップであること」が判明した場合、 様式SD に、その旨と「実施した『合理的な原産 国調査』の簡潔な内容と調査の結果」「この情報 を掲載しているウェブサイトのURL」を書く。 「DRC 諸国産である」と判断された場合、ステッ プ3 へ進まざるを得ず、デューデリジェンス手続 を実施することになる。ただ、その手続きを実施 してから「DRC 諸国産でない」または「リサイ クル・スクラップであること」が判明した場合は、 紛争鉱物報告書の提出は不要で、様式SD に「結 論」「合理的原産国調査の簡潔な内容」「デューデ リジェンス手続の簡潔な内容」「上記のそれぞれ の結果と、DRC 諸国産でない、または、リサイ クル・スクラップであるという信じる理由」を明 記する。

また記録を保持することは要求されていない が、適切な記録保持は法令遵守を立証するのに有 益であり、OECD ガイダンスのようなデューデ リジェンスのフレームワークでは要求されている ので、保持するに越したことはないだろう。

ステップ3――デューデリジェンス手続の実施と紛争鉱物報告書の提出

ステップ3 で用いられるフレームワークとして は、今のところOECD ガイダンスが唯一のもの とされている。OECD ガイダンスでは、鉱物サ プライチェーンにおけるリスクベースのデューデ リジェンスのための5 ステップの枠組に準拠して 手続きをする形になっている。この段階になると、米国上場企業がデューデリ ジェンスを実施し、外部監査人か監査を実施する こととなり、取引企業はこれに協力することにな る。

デューデリジェンス手続きの結果、「様式SD への開示」と「紛争鉱物報告書の提出」が必要と なる。様式SD には「紛争鉱物を製造等に使用し ている旨」「紛争鉱物報告書を様式SD に添付し ている旨」「紛争鉱物報告書を掲載しているWeb サイトのURL」を記載する。 ステップ3 では、「製品・商品の中に、DRC 諸 国における武装グループに対して直接的または間 接的に、資金提供または恩恵を与える紛争鉱物が 含まれているかどうか」を確認することが求めら れ、その結果として、「DRC 紛争非関与ではない」 「DRC 紛争非関与である」「わからない」という 3つのケースが考えられる。いずれの場合も、様 式SD の付属書類として紛争鉱物報告書を提出す るが、記載内容は当然変わってくる。また、「DRC 紛争非関与ではない」「DRC 紛争非関与である」 場合は、「外部監査人による監査を受けた旨の記 載」が必要だが、「わからない」場合のみ、監査 報告書の必要はない。

皆で取り組んで効果を上げたい

「DRC 諸国産のものがなければ、会社として取 り組むことはない。」とか「SEC 登録企業でなけ れば、ステップ3 は関係ない。」と言う意見もある。 確かに直接的には関係ないかもしれないが、武装 勢力の資金源となる鉱物を排除していくという最 終目標を考えれば、ステップ3 は重要なので、依 頼のあったSEC 登録企業には是非協力してもら いたい。

というのも、原産国では小さい会社が鉱物採掘 によって生計を立てているわけで、鉱物資源の安 易な切り捨ては彼らの生活の糧を奪ってしまうこ とにもなりかねない。なので、DRC 諸国産の鉱 物を使っていたら、手間はかかるが、取引先として協力して、武装勢力に関連して本当に排除すべ き鉱物だけが排除できればと思う。企業としては コストとのバランスもあるだろうが、理想論で終 わらせるわけにはいかない。実際にこの制度の効 果を出すためには、まずは個々の企業にとっての リスクを考えつつ、自社がどういうスタンスで取 り組むかという考えを固めていってもいたい。ど こかの企業がやればいいというのではなく、皆で 取り組まないと効果がない取り組みなのだから、 多くの会社がその趣旨を理解し、こうした経済活 動を通じて人びとの幸せにつながれば、と願って いる。

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