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DNVエキスパートインタビュー

開発は
人でなく
プロセスで
作りこむ

近藤 聖久
#03
近藤 聖久
KIYOHISA KONDO

Safety & Assurance Dept. エキスパート

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Introduction

開発現場に潜む「なぜかうまくいかない」「品質が安定しない」といった課題。その根源には、多くの場合、開発プロセスそのものの問題が存在する。特に複雑化する車載ソフトウェア開発において、プロセスの標準化と改善は喫緊の課題である。

今回ご紹介する近藤さんは、開発者、PM、品質保証という多角的な視点から、この課題と長年向き合ってきたエキスパートだ。多くの組織が陥る「人依存」開発の危うさを知り、Automotive SPICE(A-SPICE)を活用したプロセス改善の重要性を説く。

彼が断言するのは「A-SPICEは規格ではなく“物差し”である」という言葉。その真意とは何か。形骸化しないプロセス改善の本質に迫る。

Automotive SPICE
アドバイザリとは?

Automotive SPICE(A-SPICE)とは、車載ソフトウェア開発プロセスの能力成熟度を測るための国際的な評価モデルです。自動車の機能が高度化・複雑化する中で、ソフトウェアの品質と信頼性を確保するため、多くの自動車メーカー(OEM)がサプライヤ―に対してA-SPICEへの準拠を求めるようになっています。特に欧州OEM向けサプライヤ―にとっては、もはや必須といっても過言ではありません。

DNVの「A-SPICEアドバイザリ」は、このモデルをお客様の開発プロセス改善に「活用」するお手伝いをするサービスです。単にモデルの要求事項を満たすことを目指すのではなく、A-SPICEの考え方を基盤としつつ、お客様の組織文化や実情に合った、本当に開発が「楽」になる、合理的で網羅的な仕組み作りを支援します。
Automotive SPICEの狙い
Automotive SPICEの狙い
複雑化する自動車開発において、サプライチェーン全体でのプロセス能力向上が不可欠です。

なぜ
プロセス改善が必要なのか?

長年の開発経験を通じて痛感するのは、多くのプロジェクトが「人依存」や「品質のバラツキ」に起因する問題を抱えていることです。特に日本では、担当者のスキルや努力に頼る傾向が強く、大規模・複雑化した製品開発では限界があります。OJTも大切ですが、原理原則を共有せずに前任者のやり方をそのまま続けるだけでは、作業のムダや見落としが多くなります。 A-SPICEは、まさにこうした課題に対する処方箋となり得ます。開発プロセスを標準化し、役割と責任を明確にすることで、属人性を排除し、組織全体としての開発能力(ケイパビリティ)を高めることを目指します。
なぜプロセス改善が必要なのか?

A-SPICEは
組織を測る“物差し”

A-SPICEというと、難解で厳格な「規格」というイメージを持たれがちですが、私はむしろ「組織の健康状態を測るための“物差し”」だと捉えています。これは企業の健康診断と似ています。診断結果(アセスメント結果)を見て、弱点を把握し、「ここを改善しよう」と具体的な対策(プロセス改善)を考えるためのツールなのです。レベル達成自体が最終目的ではありません。 重要なのは、この“物差し”を定期的に、そして正しく「活用」すること。それによって組織の現状を客観的に把握し、継続的に開発プロセスの「健康」を維持・増進していくことが可能になります。
A-SPICE活用による組織の健康サイクル
A-SPICE活用による組織の健康サイクル

A-SPICEプロセス改善:
成功の鍵とDNVの役割

A-SPICEプロセス改善成功の鍵は「組織の主体性」です。実行・定着をさせるのはお客様自身であり、経営層・管理職のコミットメントと推進チームの主体性が不可欠です。

DNVは、長年の開発経験とA-SPICEに関する深い知見に基づき、お客様の主体的改善を現状分析から定着まで実践的支援。お客様の文化を尊重し、時には厳しい意見も交え、本質的改善へ導きます。

A-SPICE活用による組織の健康サイクル

A-SPICE活用による組織の健康サイクル
お客様とDNVの連携が、A-SPICE対応プロセス改善成功への確実な道筋を創ります。

プロセス改善が生み出す効果:「楽」になる開発へ

A-SPICEを活用したプロセス改善の目的は、単なるレベル達成ではありません。ISO/IEC 12207やPMBOKといった国際標準の考え方を取り入れ、合理的で網羅的な仕組みを構築することで、開発現場の負担を減らし「楽な開発」を実現することを目指します。

属人化や非効率な手戻りをなくし、誰もが安定した品質を生み出せる環境を整えることーーそれが本質的な価値です。DNVは、その実現に向けて具体的なプロセス構築やトレーニング、アセスメントを通じてお手伝いします。

プロセス改善後に得られる効果

 プロセス改善後に得られる効果
具体的な改善効果
具体的な改善効果

DNVが提供する
A-SPICE支援の全体像

DNVは、Automotive SPICEに関する知識習得から実践的なプロセス導入、そして客観的な評価まで、お客様のニーズに合わせて段階的かつ包括的な支援を提供します。「トレーニング」と「アドバイザリ&アセスメント」を組み合わせることで、より効果的なプロセス改善を実現できます。
DNVが提供するA-SPICE支援の全体像
DNVの強みは、豊富な開発経験を持つエキスパートが、形式やマニュアルに囚われず、お客様の組織に本質的に必要な取り組みを提案できることにあります。

世界レベルの専門性:Principal Assessor

Automotive SPICEのエキスパートの中でも、特に高度な知識と豊富な経験を持つのが「intacs®認定 Principal Assessor」です。この認定は、アセスメントを独立して主導できるだけでなく、他のアセッサーの指導・育成にも携われることを示します。さらに、プロセス改善に関する助言や支援を行う能力を備えている点も特徴です。

資格の維持には定期的な更新要件があり、全世界でも保有者は限られています。DNVには、この希少な資格を持つエキスパートが、近藤を含め2名在籍しています。これは、お客様に世界最高水準のAutomotive SPICE関連サービスを提供する上での、DNVの大きな強みです。
Principal Assessor講師陣
DNVは、Principal Assessorを2名有し、お客様のさまざまなニーズに柔軟に対応できる体制を備えています。

番外編:夜明け前の思索の時間

毎朝、夜が明けきる前の散歩が日課です。夏は植物や鳥を、空気が澄んだ季節の暗い時間には星を眺めます。静かな時間の中で頭をリセットし、思考を巡らせるのが、私にとって最高のリフレッシュ方法ですね。

たまに流れ星を見つけると、得した気分になります(笑)。この散歩の延長にあるのが登山なのですが、最近なかなか遠出できていないのが少し残念です。

この写真は、奈良と三重の県境にある大台ケ原にて、最高峰の日出ヶ岳(標高1695m)を登頂した際のものです。久しぶりの「朝散歩・遠出バージョン」で、朝6時頃に山頂に到着したのですが、汗だくで眼鏡が曇ってしまいました。その後は、涼しい風を感じながら大台ケ原の雄大な景色をゆっくり散策し、リフレッシュするひとときを楽しみました。自然の中で迎える朝は、そんなハプニングすら含めて格別です。

番外編:意外な
近藤 聖久

近藤 聖久| Kiyohisa Kondo

Safety&Assurance Dept.エキスパート

電機メーカーにおいて、車載機器をはじめ、衛星搭載SWやプラント制御通信機器など、100件以上のプロセスアセスメントを実施し、品質改善、生産性向上に貢献。 また、各ドメインでのプロジェクト改善指導に加え、プロジェクト管理やSW開発手法、環境整備などの技術者教育、品質保証、技術契約などに従事。コミュニティ活動では、日本SPICEネットワークの諮問委員として、日本のアセッサ、SPICEに関わる能力向上に貢献。

【保有資格】
Automotive SPICE® intacs Principal Assessor
最後に、ホームページをご覧の皆さまへ

A-SPICEは、適応や準拠を求めるための規格ではありません。すべての開発・管理活動を網羅しているわけではなく、開発における一般的、いわば“最低限押さえておきたい活動”を示したものです。

健康診断に例えるなら、「定期的に確認しておきたい重要なポイント」を共通の基準で可視化するためのツールです。 だからこそ、アセスメントという“健康診断”を定期的に行い、組織の状態を客観的に把握しながら、より健全で強い開発体制を築くために、A-SPICEを“活用”していくことが大切です。