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太平洋セメント株式会社

第三者検証を活用しサステナブルな取組みでのデータの妥当性証明と組織の活性化

コンクリートに対するイメージはどんなものだろうか。 もしかしたら「冷たくて硬いもの」多くの人はそんなイメージをもつかもしれない。また、私たちの周りにあるビルや住宅、道路、橋を形作るのに必要不可欠であるというイメージがあるかもしれない。セメントはコンクリートの主要な材料である。セメントは、複雑な工程を経て作られているが、品質と同時に、その過程において近年、環境への配慮が求められるようになってきている。 この動きを牽引するのがセメントの生産で国内トップシェアを誇る太平洋セメントだ。秩父小野田と日本セメントの合併によって平成10年に発足した同社は、海外展開にも注力。世界の主要セメントメーカーとともに「持続可能な発展」を目指して、自主対策に取り組み、この活動に基づくCO2排出量や災害統計などの非財務的評価指標を「CSRレポート」上に公表している。 公表にあたっては、正確性や透明性を高めるために、第三者機関による検証を実施。この検証によって同社は、サステナブルな取組みに関するデータの妥当性を証明できたばかりでなく、海外拠点を含む組織全体のコミュニケーション活性化や従業員のモチベーション向上にもつなげている。(1/2)

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世界規模で「持続可能な発展」に挑むセメント業界

太平洋セメント株式会社

「セメント産業はローカル産業と思われがちだが、世界的な視野でみると、国際資本が入るなど主要国のメーカーの多くはグローバルに展開している。また以前から日本国内のインフラ整備は一巡し、セメント需要は頭打ちになってくるだろうとの予測もあった。生産技術はもちろん、環境技術などセメントメーカーとして培ってきたノウハウを海外に提供することで、現地での持続可能な発展にも貢献できる」。太平洋セメントの総務部CSR推進担当部長の前田健一氏は、新興国を中心とした海外展開に注力することになった背景を説明する。

今から約10年前に、スイスを本拠地とする「*持続可能な発展のための世界経済人会議」(WBCSD)にセメント部会(CSI)が発足し、同社もそのメンバーとなった。CSIの狙いは、世界的に認知されているWBCSDの活動を通じて各国のセメントメーカーとともに、持続可能な発展のためのさまざまな課題に自主的に取組んでいこうというものである。

CSIは自主行動計画を策定。「気候変動の防止(CO2排出量)」「原燃料の利用」「従業員の安全衛生」「排出物質の削減」「地域社会への影響」「コミュニケーション」の6分野を優先課題とし、具体的に行動していくことを決めた。さらに実際にどう取組んでいるかがわかるよう、数値化して公表することをステークホルダーに公約。「気候変動の防止(CO2排出量)」と「従業員の安全衛生」の数値については、第三者によって検証されることを義務付けた。

「セメント産業というのは、製造過程で多大なエネルギーと資源が必要である。だからこそ、率先して環境に配慮しているのだが、なかなか伝わりにくいこともある。正しく理解してもらうためには、実態を把握し数値化して公表することは非常に重要」と、前田氏はCSIにおける活動の意義を語る。

「正しく検証された数値を公表する」ことは、適切な政策立案にもつながる。 たとえば「気候変動の防止(CO2排出量)」について、CSIでは世界のセメントメーカー共通の算定報告基準を開発、CO2排出量に関するグローバルなデータベースを構築しているが、これは排出権取引が始まっているEUではセメント業界のベースとしてすでに活用されるなど、具体的な政策立案に役立っている。前田氏によると、このデータベースの意義は国内でも関係省庁に認知されつつあるという。

「現在国内ではCO2排出量取引などについてさまざまな議論が展開されているが、適正な政策を導くには、産業セクターごとに実状を捉えることが不可欠。セメント産業がCO2排出量削減に対し取組んでいる実態を明らかにして、業界のあり方を訴えていきたい」と前田氏は力を込める。

「廃棄物のリサイクル機能」に期待が高まる

さらに前田氏は「実は、サステナブルな取組みでは日本のセメント産業はかなり進んでいる」と胸を張る。
その一例がセメント生産におけるリサイクル資源の活用だ。セメントの主原料である石灰石は、天然資源の少ない日本が100%自給できる数少ない資源だが、その天然資源に頼らずにリサイクル資源を活用することは、約40年前から続けてきた。現在、1トンのセメントを製造するには1.5トンの原料が必要だが、そのうち業界平均で約450キログラムはリサイクル資源を活用している。

「当初、こうした取組みは単にビジネスとして捉えてきた。しかし、量が増え、地方自治体からも一般廃棄物処理を任されるようになると、社会的な要請も高まってくる。ビジネスとして儲からないからやめるといったことは簡単にはできない。
一方では、国内需要が減っていくという課題もある。いかに良質なセメントを供給しつつ、どう市場構造に合わせるか。さらに廃棄物リサイクルの役割にどう応えていくか。なかなか難しいが、だからこそ、正しい活動を行っていることを証明できることが大事になってくる」(前田氏)

海外14サイト、国内13サイトで検証実施

前田氏の言う「きちんと責任をとる企業としての存在をアピール」する方法の一つが情報の公開である。同社では、CSI自主行動計画で第三者検証が義務化されているCO2排出量と災害統計のデータについて検証を受けている。このデータ検証を第三者検証機関であるDNVに依頼する。

同社にとって、DNVは他にはない「世界的なネットワーク」と「第三者検証機関としての実績、確たるブランド」があった。今回太平洋セメントの検証対象となったのは、国内外のグループ会社も含むセメント工場(粉砕工場含む)全27サイト。そのうち海外は14サイト、国内13サイトと、海外のほうがやや多い。

この27サイトを3年で一回りできるよう、DNVの監査員は毎年約10サイトをサンプリングで選出し、実際に工場に足を運んで検証する(別途本社で全体のデータの集計過程も検証する)。

その際、検証機関としてグローバルネットワークが確立していれば、現地のDNVのサポートも受けられ、より適切な検証が行える。海外拠点の多い企業にとっては、実に頼もしい存在であるのだ。

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太平洋セメント株式会社

1998年に秩父小野田と日本セメントが合併して設立されたセメント業界最大手の企業。

セメント業界を取り巻く環境変化に伴ない、他の産業や地方自治体などからの廃棄物をセメントの代替原燃料として再利用する等、「循環型社会」の中核企業を目指す。資本金695 億、従業員2,173名(2009年3月現在)。

※1 持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)

(World Business Council for Sustainable Development: WBCSD)経済成長、環境保全、社会的公平性の調和という持続可能な発展の理念の下に結束した約200社の国際企業の連合体。36ヶ国以上22産業部門から参加し、多くの国や地域の経済会議や組織からの支援を受けている。

※2 ILO

世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国連最初の専門機関。第1次世界大戦が終結した1919年、最初にパリ、次いでベルサイユで開催された平和会議において誕生。本部はジュネーヴ。加盟国は183ヶ国(2009年5月現在)

※3 バリ行動計画

 「バリ行動計画」とは、京都議定書の第一約束期間(2008年-2012年)後である、2013年以降の温室効果ガス削減の枠組みの設定について話し合うための行程表のこと。2007年12月にインドネシアのバリで開催された「国連気候変動枠組条約第13回締約国会議及び京都議定書第3 回締約国会合(COP13/MOP3)」の最重要課題として採択。 気候変動枠組条約の下にすべての締約国が参加して2013年以降の枠組み等を議論するため、新たな特別作業部会を立ち上げ、2009年までに新たな枠組み等について採択することが合意された。