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富士通株式会社 国際統合認証取得企業インタビュー前半

パソコンなどIT関連事業で世界の最先端をひた走る富士通株式会社は3年前、富士通本体と国内連結子会社90社、海外連結子会社11社、実に計11万7,000人を対象とするISO14001国際統合認証を取得し、地球規模の環境マネジメントシステムを構築することに成功した。 同システムのねらいはサプライチェーンを基盤とした環境リスク対応の強化およびグループとしてのガバナンス強化にある。結果、企業価値を共有することに成功し、“One Fujitsu”と称する、ただひとつの方針に基づいて世界の全拠点が動くという理想的なガバナンスを実現できた。

この国際統合認証では、国内拠点と海外拠点を異なる認証機関が受け持つという「合同審査」を採用した。海外の審査を担当したDNVにとっては初めての合同審査であり、認証までの過程では難問とも対峙することになるが、富士通とふたつの認証機関3者が足並みをそろえ課題を解決していった。  ⇒【click here for English version 】

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One Fujitsu――その手段は国際統合認証

富士通は世界に名だたるグローバル企業であるだけでなく、屈指の“グリーン企業”でもある。3年ごとに環境行動計画を策定し、全世界に製品を輸出しているという立場から徹底的な環境リスク管理を敷く。各国の様々な環境規制に対応し、省エネや含有化学物質などの観点で環境要素がトップレベルにある「スーパーグリーン製品(※1)」を提供し、出荷製品にクレームがない状態を維持している。

これだけの大規模な企業が常にトップレベルの環境活動を実現できているのにはわけがある。環境に関し、富士通グループにはひとつの方針のみが存在し、全社がそれに向かってまとまっているからだ。 “One Fujitsu”――これは富士通グループのガバナンス(※2)を表すフレーズ。“One Fujitsu”の背景には国内・海外全てを含んだISO14001国際統合認証取得があった。

国際統合の布石ともいえる国内統合認証の完了

富士通は2004年3月に、支社、支店、工場、事業所など全国99カ所、4万8,000人を対象とした企業本体におけるISO14001統合認証を、翌年の2005年3月にはさらに、国内連結子会社97社・457拠点を対象とする国内グループ会社統合認証達成した。これらは、かつてないほどの規模で動いた先進的な一大プロジェクトであり、今回の国際統合認証の布石でもあった。

2004年に策定された「第4期環境行動計画」で謳った、「環境マネジメントシステムに基づく環境経営の枠組みを2005年度末までにグループ全社で確立する」という目標の第1段階としてまず国内を統合したわけである。対象を海外にまで広げた国際統合認証は、この「第4期環境行動計画」のシナリオにすでに組み込まれていた。国際統合認証取得を完了しなければこの計画が達成されない。

富士通グループは北米、ヨーロッパ、アジアの各地に製造拠点や販売会社を持っているため、これらを統合する必要性は前々からあったという。国内での統合認証の目算が何とか立った時点で、いよいよ具体的な検討に入った。2003年のことである。

ふたつの命題、ガバナンスと「価値と情報の共有」

では、国際統合認証の必要性はどのような背景から生じたのであろうか? 富士通環境本部・環境企画統括部長の朽網(くたみ)道徳氏はこう説明する。「理由はふたつあった。ひとつは富士通グループのガバナンスのため。当社は多くの海外拠点を持つが、環境に関するスタンダードがひとつに確立されていなかった。工場、事業所などそれぞれの単位で動いており、ISO14001に基づく環境マネジメントを構築しているところもあればゼロのところもあった。本当の意味での“One Fujitsu”を具現化するための手段として国際統合認証が最適だった。

ふたつめが『価値と情報の共有』。価値はすなわち環境に対する価値観、そして情報とは環境リスク対応やCO2削減をはじめとする、グループ全体が使命とする環境活動全般に関する情報を意味する。グローバルなサプライチェーンを展開している当社にとって、各国での環境規制によどみなく対応できる体制づくりは必須。RoHS(※3)やWEEE(※4)への対応にも有効だ。価値と情報をグローバルに共有するのにISO14001認証の一本化は極めて理にかなっていると考えた」 朽網氏の言うガバナンスとはつまり“One Fujitsu”であり、ひとつの方針で企業が動いていくことである。

企業では、いかに多くの拠点を持とうともビジネスの方向性はひとつだ。その主体となる組織も製品やサービス単位で編成されているのが通常であろう。ところが環境マネジメントは各拠点でばらばらに設定されていることが多い。富士通は、国際統合認証をきっかけにこのちぐはぐな状態を完全一本化しようという意図があったのである。 そして同時に目指した「価値と情報の共有」。

効果として、統合により各海外拠点の横のつながりができ、各所における順法状況や環境事故などの情報をすばやく共有できるようになった。それだけでなく、富士通の掲げるさまざまな環境活動――温暖化対策、グローバルなリサイクルシステム、全ての部材調達品を対象とした「グリーン調達」、植林や地域ボランティアを推進する「環境社会貢献」などの取り組みを体系的に構築することができた。また、富士通グループでは、環境活動をコストととらえない。むしろ価値ととらえている。「世界規模で、環境というフィールドでいかに貢献できるか」という価値観をグループ全体で共有するためにも、国際統合認証は大きな意義があったわけである。

ミッション!世界623拠点・11万7,000人を統合せよ!

当初の準備は2004年後半から始まった。2005年5月、方針が決定されて具体的に計画が動き始める。まず必要だったのは、審査を担う認証機関を確定することだった。富士通ではこれまで、国内におけるISO14001認証をJACO(日本環境認証機構)中心に委ねていた。しかし、今回の国際統合認証で対象となる海外11社を完全にカバーするため、海外における審査手続きに長けた新たな認証機関の協力が必要となり、DNVが選ばれた。

「グローバルに実績を持つという信頼性、事務手続きなどの効率性、JACOとの共同作業が可能、当社海外拠点のある国に事業所がある、現地の言語や通貨で対応できるといったメリットを評価しての起用だった。このような合同での審査は、当社はもちろんJACO、DNVにとっても初めての試みで、多事多難な出帆だった」と富士通環境本部のプロジェクト部長・川口努氏は当時を振り返る。

「国際統合認証のプロジェクトが具体化した2005年は、7月あたりから半年かけて、来る日も来る日も会議を重ねた。当社、JACO、DNVの3者で、認証契約形態の協議、覚書の締結を行ない、その後審査スケジュール、クロス審査、審査結果の相互認証などについて、昼夜問わず話し合いを持った。夜遅くまで会議が長引くこともしばしばで、へとへとになったこともあった」(川口氏)最終目標はDNV-JACO両者での「ベストミックス審査」によるジョイント認証の取得。国内90社、海外11社(全623拠点)を統合した、ひとつの認証番号による登録証を獲得することである。 “One Fujitsu”実現に向け漕ぎ出されたプロジェクトは、難問に直面しながらも3者による絶妙なチームワークでジョイント認証へ一歩ずつ駒を進めていった。

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富士通

情報システムおよびハードウェアを主力商品とする日本の電機メーカー。通信、半導体も手掛け、ソフト・サービスは国内首位。官公庁や電話会社、その他大企業向けの大規模システムを得意としている。また、各種コンピュータ、ソフトウェア、電子デバイス、通信設備などを販売している。売り上げは5兆3300億円(2007)でITサービスの分野で世界第3位。世界中で研究者16,000人が最先端の研究に取り組むグローバル企業である。近年、環境負荷提言プロジェクトとして「Green Policy Project」を推進する。

※1 スーパーグリーン製品

富士通グループにおいて、「グリーン製品」(環境配慮強化型製品)適合を条件とし、「省エネ」「3R設計・技術」「含有化学物質」・「環境貢献材料・技術」などの環境要素のいずれかでトップグループレベルにあり、自社製品または市場製品との比較において極めて優れた製品またはシステムを指す。

※2 ガバナンス

企業統治。会社が運営され統制される内部的手続きのこと。コーポレートガバナンスともいう。

※3  RoHS

Restriction on Hazardous Substances(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令)の略。電気・電子機器における危険物質の法規定を整備し、生産から処分に至る全ての段階で環境や人の健康を害する危険を最小化することを目的とする。欧州会議で承認された。

※4 WEEE

Waste Electrical and Electronic Equipment(廃電気電子機器指令)の略。電気・電子機器や家電製品の廃棄物を分別収集し、再利用を図らねばならないという指令のこと。欧州会議で承認された。