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ニーズ高まる医療機器指令(MDD)への対応

安倍首相が打ち出している「成長戦略」。その中の「戦略市場創造プラン」の1つとして具体例に挙げられているのが医療関連産業だ。高齢化による国内市場の伸びだけでなく、海外輸出への期待も高まっており、政府は医療機器や医療サービスの海外展開に力を注いでいる。ただし欧州へ輸出す るにあたっては、乗り越えなくてはならない壁がある。医療機器指令(Medical Devices Directives:MDD)への対応だ。MDDとはどのようなもので、どう対応したらいいのか。MDDの適合性評価機関であるDNV GLの監査員で、医療機器業界において設計開発の経験もある前橋幸治氏に、世界の動向を踏まえつつ話を伺った。

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CEマーキング対応への基本的なステップ

実際にMDD に対応するには、どのようなステップを踏んだらいいのか。大きな流れは(図2)の通りで、まずは「製品群の特定」をする。自社が上市したい製品(例えば電子体温計など)の特定を行い、該当する指令を決める。次に「クラス分類によるクラス決定」をする。医療機器の場合、危険の程度に応じて低リスクから高リスクまで、6 クラスに分けられる。例えば滅菌機器は、Class Is(低リスク)、計測機能付はClass Im(低リスク)となる(図3)。

図3 クラス分類によるクラス決定

クラス1が決定したら、それにより「適合審査モジュールの選定」をする。もっともリスクの低いクラスの場合、1 つのモジュールで審査可能だが、高リスクになると、型式試験や設計審査などが必要になり、リスクが高いほど適合性評価手順のための要求事項は厳しくなる。次の「品質システムの構築」については、「ISO13485 の認証取得をしていれば、十分対応できる」と前橋氏。追加要求としては、ビジランス(市販後監視)システムの構築がある。例えば、 「報告すべき事象」「事故に関する報告期限(2 日、10 日、30 日)」「報告先」「事故報告が出た後の対 応」などである。

前橋氏が「ステップの中でもっともキーとなる」というのが「技術文書の作成」だ。ここにおいては「製品情報」「要求事項」「設計情報」の大きく3 つの項目を文書化する必要がある。それぞれの内容については(図4)の通りで、かなり詳細な記述が求められる。前橋氏は「実際に審査で見る のはこの部分になります。製品の安全性、有効性、場合によってはリスクなども詰まっている部分ですから、技術文書の作成は非常に重要。かなりの専門知識が必要になってくるので、ガイドラインをしっかり読んでおくべきでしょう」と指摘する。

次の「NBの選定」も重要なのは言うまでもない。NBはEU委員会から、独立したテスト機関として医療機器指令に従って手続きを進める権限を委譲されている。欧州には約200から300の機関が、国内には数社あり、DNV GLもその1つだ。

次に行うのが「指定代理人(E.A.R)の選定」だ。 指定代理人とは、MDD 第1 条 2(j)によると、「域内の個人又は法人であり、製造者によって明確に指名された者であって、この指令の下に、製造業者の義務に関して製造業者の代わりに活動し、域内の当局又は機関からの問い合わせを受ける者」となっている。 「指定代理人の決定」がなされたら「適合宣言書(案)の作成」に進む。これは製造業者が作成する文書で、製品ごとに必要だ。「製造業者名、住所」をはじめ「E.A.R の名称、住所」「製品名、型式」などを記載する。NB による「品質システム/ 関連文書に関する 監査の受審」を経て「適合宣言書へ署名」となり、「市場への出荷」が実現する。

図4 技術文章の作成

台湾で医療機器認証は60%のシェア

世界各地でさまざまな監査を行っているDNV GLは、ノルウェーのオスロにNB 専門の組織を持ち、別会社として機能させている。ここを本部として、世界各地に技術力を背景としたサービス展開を行っている。DNV GLが実施するMDDの認証については、台湾や韓国などアジア地域で多くの実績をもち、特に台湾における医療機器認証では75%と高いシェアを誇る。

その背景について前橋氏は「監査員の技術的な力量」と「ワールドワイドなネットワーク」を挙 げる。「オスロの専門組織では約30 名の専門メンバーが、全体をコントロールしています。人命に かかわるものも含まれているだけに、医療機器認証の要求事項は厳しく、かつ血圧計からカテーテル、内視鏡など領域にも幅があり、リスクの程度によっても要求事項が異なります。ですから、それぞれの製品に求められる専門知識も異なり、監査員一人ですべての範囲に対応するには限界があります。しかし我々は各国にさまざまな分野の専門家を揃えているため、どんなレベルでも質の高い監査を提供できるのです」  しっかりとした専門家による推進体制が整っている様子を語る前橋氏は、「規格の改訂情報など、世界の動きや潮流をいち早く入手してお届けできるのも強み」と続ける。 さらに2年前には、IVDDの監査を行うデンマークの認証機関を買収したことにより、サービスラインも拡充し、積極展開にはずみがついた。

ASEAN域内にも同様な規制施行の見込み

MDDは1998 年6 月13 日に発令された。すでに欧州へ輸出している医療機器メーカーは、当然「適合性の宣言」をしているが、「政府が輸出産業として注力する方針をとっていることもあり、医療機器の輸出は欧州だけでなく東南アジアや南米など世界各地にも広がっていくでしょう。そうなると、ますます認証の必要性が高まっていきます」と、前橋氏は見通しを語る。

実際、政府は官民一体となって医療機器や医療サービスの海外展開を推進する組織「MEJ」(Medical Excellence JAPAN)を立ち上げ、特に中国や東南アジアなどをターゲットに輸入拡大を目指している。

前橋氏がEUだけでなく、東南アジアなどに向けても認証の必要性を説くのは、実はASEAN域内においても、医療機器に関する規制の統合化が進められているからだ。その内容が、MDDに酷似しており、「今のうちにMDDへの対応を進めていれば、ASEANで規制ができた際にも迅速に対応できる」(前橋氏)のである。

現在、ASEAN域内ではまだ規制はできていないものの、すでにシンガポールのように、機器登録、技術文書の審査が行われている国もある。国によって対応にばらつきがあるので、統一申請様式(CSDT)を使用するAMDD(ASEAN Medical Device Directive)の施行を目指しており、2014年12月の施行を予定している。2012年8月にはパブリックコメントによって意見を募集。CSDTの開発や、他国既承認品の簡易承認プロセスの検討、ASEAN市場参入の整合システムの検討、不具合品の市販後警告システムの構築など、着々と進行中だ。

規制内容は、MDDに沿った内容になっているため、前橋氏は早めの対応を呼びかけ、さらに「実 はアジアだけでなく、他のエリアにもニーズはあります。中でも注目株はブラジルです」と指摘す る。前橋氏によると、ブラジルの医療機器の売上額は、2005年には24.6 億ドルだったのが、2010年には47.9 億ドルと、その伸びは倍近い。しかも、金額ベースで8 割弱が輸入品と、輸入に頼っているのが現状だ。

ブラジルでは製品の販売は許認可制度で、医療機器の許認可・規制関係は国家衛生監督庁(ANVISA)が所轄しており、規則類は海外先進国、特に欧州の体系を参考にして構築されている。 製品を販売するにあたっては、ANVISAに対して登録手続き(許認可)が必要だが、比較的容易にできるという。「DNV GLの事務所は、もちろんブラジルにもあるため、成長が予測されるマーケットニーズに迅速に対応できます」と、前橋氏は自社の優位性を語る。

日本の医療機器メーカーが世界展開を加速させるということは、その国の人々の医療・健康に貢献することにもつながる。優れた技術を、国内だけでなく必要とされている国に提供するのは、メーカーとしても本望だろう。そうした企業をサポートするDNV GLの取り組みにも、大きな期待がかかっている。

DNV GLサービスページ:欧州医療機器指令 / MDD
DNV GLサービスページ:ISO13485

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