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富士通株式会社 インタビュー後編

パソコンなどIT関連事業で世界の最先端をひた走る富士通株式会社は3年前、富士通本体と国内連結子会社90社、海外連結子会社11社、実に計11万7,000人を対象とするISO14001国際統合認証を取得し、地球規模の環境マネジメントシステムを構築することに成功した。 同システムのねらいはサプライチェーンを基盤とした環境リスク対応の強化およびグループとしてのガバナンス強化にある。結果、企業価値を共有することに成功し、“One Fujitsu”と称する、ただひとつの方針に基づいて世界の全拠点が動くという理想的なガバナンスを実現できた。

この国際統合認証では、国内拠点と海外拠点を異なる認証機関が受け持つという「合同審査」を採用した。海外の審査を担当したDNVにとっては初めての合同審査であり、認証までの過程では難問とも対峙することになるが、富士通とふたつの認証機関3者が足並みをそろえ課題を解決していった。

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2機関の合同審査という未知の領域、海外で直面した困難

国内と海外、そしてふたつの認証機関による合同審査は、富士通にとってはもとよりJACO、DNVにとっても初の試みであり、未知の領域への挑戦であった。 国際統合認証取得までは、2005年度の12カ月を4分割し、Q 1(1クウォーター)で組織化、Q2でしくみ構築、Q3、4で実行・進捗管理という工程で臨んだ。国際統合となると、すでに国内グループ企業におけるISO14001統合認証をやり遂げているとはいえ、それをそのまま海外で同様に行なえば良いとういう生やさしいものではない。

言語、習慣、法律、規制全てが異なるため、これら細かい問題をひとつひとつクリアする必要があった。また、前編で述べたように、ISO14001を工場や事業所単位ですでに取得し、それに基づく環境マネジメントを構築しているところもあれば一からつくりあげねばならないところもあった。富士通のプロジェクトチームは、拠点のある北米、ヨーロッパ、東南アジアで今回対象となる箇所の担当を決め、各拠点に足を運んで、現地の経営層および担当者にISO14001認証一本化の必要性、メリット、効果を説いてまわった。

すでにISOを取得している拠点では、国際統合認証に合わせて認証機関を切り替えるという手間が生じる。しかしそれを押してでも一本化する必要性の説明や交渉もしなければならなかったのである。「既存のものをグローバル認証に合わせて切り替えるのも確かに大変だったが、ISO認証自体取得していない拠点、つまり新規立ち上げも他と同じフェーズの中で一緒に行なうというのはさらに骨の折れることだった。ISOの要求事項にも明記されているように法律への対応が重要なのであるが、われわれでも各国の法律の詳しいところまではさすがに分からない」と言うのは環境本部・環境企画統括部の内田淳也氏。

アジア地域を担当した同部の二見亘氏はこう語る。「アジアでの現地説明は、5日間で拠点4ヵ所をまわるという強行スケジュールだった。あるところでは現地の工場責任者に、顔を合わせるなり『まず市街を見て来い』と言われて面食らった。国には国のやり方があるのだと、身をもって思い知らされた出来事。管理に関する意識のレベルが日本と大きく異なる。例えば中国。廃棄物管理では徹底的な役割分担がなされており部外者が口を挟めない。ことごとく日本の常識は通用しなかった。とにかくできる限りのコミュニケーションでお互いの隙間を埋めた。その甲斐あってか、最終的にはもちろん理解してもらい現在の運用に至っている」

それぞれの現場の法規制が日本の側ではわからないので、国内の内部監査のメンバーが現地のメンバーと密に情報交換して知識を習得していた。

グループの一員として環境に貢献しているという意識が向上

中国拠点のひとつ、JFTT(江蘇富士通通信技術有限公司)の総経理・小笠原氏に当時の話をうかがった。225名の従業員を擁するJFTTでは通信関連製品の製造を行ない、ソフト開発と技術サービスを事業のメインとしている。「当社は1998年、すでにISO認証を単体で取得していた。国際統合認証への移行は、ISO14001の要求内容が実質的には変わらないためとくに困難を感じたことはなかった。元々の会社としての基盤がしっかりしていたからだと思う。あえて苦労したことをあげるならば、国際統合のためマニュアルをはじめ中国語がベースだったところに英語も必要となったこと。また、工数が以前より増加したことくらい。

審査開始にあたって富士通のトップと意見交換することになったとき、認証機関であるDNVから、実際の審査を通して監査員のノウハウを生かした改善案を出してもらったことが印象深かった。国際統合認証取得後、富士通グループの一員として環境活動に参加し、社会的影響力を実感するとともに社員全員の環境保護意識のレベルアップができたと思う。また、社員とのコミュニケーションを通して、システムも重要だが最後はやはり人なんだと感じることができた」

審査のために必要なアクションやスケジュールは国内同様であるため、各拠点での説明や交渉が終わってからはスムーズに進んだ。ただ、先に小笠原氏が述べたように、レポートやマニュアルなどの言語の扱いに苦労があったという。英語をベースに、必要なら一部現地語という形をとった。また、海外拠点の事業所、工場で業務に携わる全ての社員に国際統合認証に関する教育を施すのに、face to faceは到底無理だ。そこで活躍したのが富士通のお家芸ともいえるe-ラーニング(※5)であった。ここでもそのテキストは日本語含め11カ国語に訳された。

大いなる財産、グローバルなネットワークラインの確立

2006年2月に審査が終了するまで、書類や情報のやりとりはEメールをベースに行ない、必要に応じて電話会議で詳細なコミュニケーションを図ったという。国内、海外とふたつの審査機関を利用することで、付加作業や二重作業、窓口の複雑化が予想されたが、3者で定期的に会議を持って密な連絡をとることによってこのような問題をクリアしたのだった。

スケジュールは国内、海外を同期させながらJACO、DNVで個別に監査を進め、双方の立会い監査を実施してお互いの監査内容を確認するというもの。そして最終的に相互レビューを行ない、3月には晴れてジョイント認証書を発行した。今回の国際統合認証取得は、他の国内企業に対し大きなインパクトを与えた。事例発表セミナーや他社からのヒアリングなどの要請が今でもひっきりなしにある。

この認証取得をきっかけに、世界各地で年1回のEMS(環境マネジメントシステム)会議も開催している。朽網氏は、「何より、今回の国際統合認証が契機で環境マネジメントシステムのグローバルなネットワークラインを完成させることができた。富士通グループにとって大いなる財産だと思う。今後、この経験を活かして環境マネジメントシステムを継続的に改善し、今回対象外であった海外の非生産拠点にも統合認証を拡大していきたい」と締めくくった。

JACO(株式会社日本環境認証機構)・国際審査センタ-
センタ長 一杉 敦氏のコメント http://www.jaco.co.jp/

今回の合同審査はJACOにとっても良い経験になったと実感している。ISO14001の統合によって世界623拠点をとりまとめるEMS(環境マネジメントシステム)の共通言語ができた。これは世界に誇れる素晴らしい成果だと思う。まさに“One Fujitsu”の体現であると言えよう。この成功には海外の審査手続きに長けるDNVの存在があったことが大きい。これからもDNV-JACOのベストミックスを様々な場で役立てたい。

DNVビジネスアシュアランス ジャパン
技術部EMS/SMS 担当マネージャ 中山 茂のコメント http://www.dnv.jp/

ふたつの認証機関でひとつの登録証をとるからには、双方がお互いを認め合わなければならない。2者間の調整などには確かに色々な苦労があったが、これほど大きなプロジェクトに関るというのはなかなか経験できるものでもない。「日本の企業がここまでやるのか」といわれるまでにインパクトを与えた今回の統合認証は、社会的にも意義がある。多岐にわたる業種を擁する富士通の巨大な舞台を借りて新しい試みに取り組むことができ、DNVとしても大きな収穫があったと言える。

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富士通

情報システムおよびハードウェアを主力商品とする日本の電機メーカー。通信、半導体も手掛け、ソフト・サービスは国内首位。官公庁や電話会社、その他大企業向けの大規模システムを得意としている。また、各種コンピュータ、ソフトウェア、電子デバイス、通信設備などを販売している。売り上げは5兆3300億円(2007)でITサービスの分野で世界第3位。世界中で研究者16,000人が最先端の研究に取り組むグローバル企業である。近年、環境負荷提言プロジェクトとして「Green Policy Project」を推進する。

※1 スーパーグリーン製品

富士通グループにおいて、「グリーン製品」(環境配慮強化型製品)適合を条件とし、「省エネ」「3R設計・技術」「含有化学物質」・「環境貢献材料・技術」などの環境要素のいずれかでトップグループレベルにあり、自社製品または市場製品との比較において極めて優れた製品またはシステムを指す。

※2 ガバナンス

企業統治。会社が運営され統制される内部的手続きのこと。コーポレートガバナンスともいう。

※3  RoHS

Restriction on Hazardous Substances(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令)の略。電気・電子機器における危険物質の法規定を整備し、生産から処分に至る全ての段階で環境や人の健康を害する危険を最小化することを目的とする。欧州会議で承認された。

※4 WEEE

Waste Electrical and Electronic Equipment(廃電気電子機器指令)の略。電気・電子機器や家電製品の廃棄物を分別収集し、再利用を図らねばならないという指令のこと。欧州会議で承認された。