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株式会社ジャパンファーム

「資源循環型社会」に向けた食肉業界リーディングカンパニーの挑戦

地球温暖化の問題が迫ってきているいま、私たちはこの問題にどう向き合うべきか。未来に向かって私たちにできること、企業として果たすべき責任や役割は何か。本シリーズでは「低炭素化社会」に向けた企業の取組みをレポートする。第2回となる今回は、食肉業界のリーディングカンパニー、ジャパンファームの活動を紹介する。

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完全循環型モデルを日本で初めて完成

自然に囲まれたファームを背景に
中屋 修 執行役員養豚事業本部長(左)
中隈輝男 養豚事業本部生産部長(右)

ジャパンファームはチキン事業と養豚事業を柱に、実験用ミニ豚の繁殖などを行っている。三菱商事などの出資で1969年に設立。企業理念は「地球と人の健康に貢献します」。ケンタッキーフライドチキン(KFC)の生産認定工場第一号でもあり、KFCの全国店舗で販売しているチキンの約3割がここで加工されているから、同社の製品を食べたことのある人も多いだろう。年間チキン処理数約3,500万羽、年間肉豚出荷頭数約16万頭という国内でも最大級の規模を誇っている。

鹿児島市内から車で1時間半、東京ドーム27個分の敷地をもつ鹿児島県伊佐市大口宮人にあるジャパンファームの養豚事業本部。同本部が全国の自治体や大学など研究者、マスコミから民間企業まで幅広い層から注目を集めるようになったきっかけは焼酎の絞り粕の再利用を核とした完全循環型環境モデルの完成であった。

焼酎製造過程で廃棄物となった焼酎粕を豚の餌として与え、フンを焼酎の原料である芋の肥料として再利用する仕組みである。焼酎の製造過程で生じる食品残渣である焼酎粕を液状のまま飼料として豚に与える、リキッドフィーディングを中心としたシステムを作り上げたのである。複数の企業が集まってつくる完全リサイクルモデルで、完全に民間企業だけで手を組んだ事例は過去に類を見ない。

ジャパンファームと手を組んだ大口酒造は、同じ食品業界とはいえ養豚と焼酎という全く接点の無い民間企業同士。それがコスト削減と環境保護を目的として手を組み、CO2と生産コストの同時削減を実現させた上、利益を上げるという国内で誰も成し得なかった全く新しいモデルを作り上げた。こうしてリキッドフィーディングシステムを完成、地元の企業同士が手を組み、大規模に安定した供給システムを作り上げたことで大きな注目を浴びることになったのである。

焼酎粕の再利用の苦労と成果

株式会社ジャパンファームに対するISO14001認証書

両者が手を組む最初のいきさつについて執行役員養豚事業本部長中屋修氏は、「もともと地元企業が定期的に集まる飲み会から生まれたようです」と言う。これまで認められていた焼酎粕の海洋投棄がロンドン条約により2007年に完全禁止となる。外部委託の廃棄コストも上がり、かといって新しく敷地内に処理設備を建設するのは困難で、このままでは生産にも経営にも影響すると悩んでいるという話をジャパンファームが耳にした。 絞り粕とはいえ焼酎の成分も含まれており、焼酎生産工場からつくられた安全性の高い液体であることがわかった。通常、豚は雑食性で発酵食品を好むが、ジャパンファームで焼酎粕を与えたことはこれまでにない。「とりあえずためしに餌として与えてみたらどうだろう」という単純な発想からスタートしたのである。「ご近所同士で、何か役に立ちたいと始めた動機は単純ですが、意識下にはコスト削減や環境保護、地域社会への貢献、社会共存という大きな視点もありました」(同中屋氏)。

試験的に与えてみると豚の嗜好性に合い、これまで以上にたくさん食べる。特に夏場、食欲のない時期は水分を好み、成分の90%以上が水の焼酎粕を与えると食欲が落ちない。

約2年にわたる開発実験の結果、これまでの飼料よりも順調に体重増加し、さらに良いことに加工した豚肉に含まれるアミノ酸などのうまみ成分が多くなって、より美味しい豚肉となることがわかった。非常に期待できる実験結果だった。

最大の課題は焼酎粕自体の品質管理と安定供給体制の確立である。安全な食肉にするためには餌でさえ高度な衛生管理が必要となるが、大口酒造は焼酎粕の品質劣化を防ぐための貯蔵タンクを購入、品質管理と安定供給体制を整えた。

リキッドフィーディングシステム
焼酎絞り粕と色々な原料を調整、混合。健康で必要な栄養分を自動ブレンド

また、これまで焼酎製造では8月から12月が通常の操業期間である。温度管理が難しかった昔からの慣いだが、大口酒造では焼酎粕の安定供給のために工程を大幅に見直して、創業以来初めての年間操業を行うように変更した。

とはいってもジャパンファームが実際に現在のようなシステムを完成させるためには約2年間、通常業務をこなしながら焼酎粕を使用した自動装置の開発・研究をしなければならなかった。

完成までの道のりは想像以上に険しいものがあった。参考事例が国内はもとより海外にも無く、独自に生み出すしか無かったのである。結局、海外から輸入したビッグダッチマンという装置を基に細かく自分たちで調整していった。「毎日手探りの状態でしたが、若い人たちは切り拓く楽しさがあると頑張ってくれました。もともと動物相手の面白い仕事ですが、新しい取り組みで、モチベーションをさらに上げることができました」(養豚事業本部生産部長中隈輝男氏)

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