Robert Djurovic/北米自動車サービス部部長
Henrik O. Madsen/DNV認証事業COO(現 DNV CEO)
Yehuda Dror/北米・南米DNV認証部門統括責任者
Michael Frolich/国際自動車産業マネージャー
自動車産業の進むべき道
第4回‐『国際品質基準の自動車産業界をめぐる未来について‐DNVトップが語る‐』
今ヨーロッパで一番関心のある自動車品質の話題といえば、SCM(サプライチェーンマネジメント)とソフトウェアデザインプロセスを監査するフォーラムの立ち上げである。
自動車産業は刻々と発展を遂げており、世界の自動車産業はこの変化に対する挑戦を求められている。これこそが自動車産業のチャレンジであると業界のトップたちは確信している。この度、世界の品質の内情を正確に把握している欧米のDNV認証機関役員たちの貴重な見解を聞けることとなった。
SCM(サプライチェーンマネジメント)


「経営の必要条件とは、環境や品質、法的なクオリティを求めて進化し続けることだ。」とアメリカのDNV認証部門統括責任者Yehuda Dror氏は言う。「今、業界内で、サプライチェーンマネジメントの話題が良く出てくる。」
DNV認証部門は国際品質基準の登録機関である。だからこそ世界中のOEMやサプライヤーからのフィードバックを受けて、多くの内情に精通している。
「OEMがよくこう言っているのを耳にすることがありますね。『サプライヤーがISO9000を取得したのだが、それで問題が解決した訳ではない』と。」とDNV認証部門COO(現DNV CEO)Henric O. Madsen氏は語る。
「認証システムだけで全てがうまくいくということはありません。同時にサプライチェーンや生産プロセスを見直し、立て直すことが肝要です。」
AIAGやヨーロッパにあるその取引先【VDA(ドイツ)、Galia(フランス)、Odette(スウェーデン)】のような機関が国際品質にプラスの影響を与え、企業推進への取り組みにも決定的に重要であると彼らは主張する。
「全ての企業に必要なことを明確にする機関がAIAGだと認識するのが一番手っ取り早い。」とDNV認証部門国際自動車産業マネージャーMichael Frolich氏は言う。「今度は、認証プログラムをレーティングやアセスメントにおいても進めていきたいですね。AIAGやその他の機関も、すでにさまざまな分野での認証プログラムの推進を考えているが、実行に移すのはなかなか難しい。
「AIAGは立場上、サプライヤーやOEMから、『これがわれわれの現状です。どうすればいいのでしょう。』と良く言われます。」とアメリカのDNV自動車サービス部部長Robert Djurovic氏は付け加えた。「経済が不況になればなるほど、我々への期待も大きくなります。AIAGの役割はより重要になってくるのです。」
ソフトウェアの監査体制
サプライチェーンのマネジメント強化こそがDNVにとって次なる課題であり、特にソフトウェアのデザインプロセスの監査体制に力を入れるべきだと考える。彼らの予測は以下の数字を見ると論理的である。
- 車の開発にかかるコストの約30-40%がソフトウェア関連である。
- 世界で自動車リコールの原因の約60%は何らかのソフトウェアに問題が生じたためである
- 一般的な高級車の約70-80%にはソフトウェアシステムが組み込まれている。
「自動車に内蔵されるソフトウェアの普及に伴って起きる問題はさまざまだが、なんと言っても運転中のソフトのトラブルだけは避けたい」とDjurovic 氏は言う。「ですから、ソフトウェアにおいても基準を設けて管理体制を整えることが最重要課題なのです。自動車のソフトウェア内蔵率は急激に増加傾向にある今、まさに必要な制度です。」
すでに、ヨーロッパの自動車産業では、ソフトウェアにも基準を設けて認証していくべきだという考えが広まっている。「ABS、イグニッション、ナビ、などは全てソフトウェアによってコントロールされています」とFrolich氏は指摘する。「自動車の安全性を考えると、まだまだソフトウェアの開発は完璧ではないが、ソフトウェアは車にとっては必要なシステムなのです。」
あるドイツの自動車企業は、ソフトウェアに特化したシステムを導入していくことを決めた。アメリカにおいても、ソフトウェアのデザインプロセスの監査を推し進めていくべきだとAIAGは主張している。「世界中で取り組むべき課題です」とAIAGのトップたちは話す。「大手自動車メーカー数社が、AIAGにソフトウェアの基準監査システムを導入することを期待しています。」とFrolich氏は言う。
ハードウェアの監査システムよりも、ソフトウェアの監査のほうが数段複雑で難解と思われているが、然程変わりないと思いますとFrolich氏は述べる。「他の認証システムのように、ソフトウェアも認証できるシステム構築は可能です。ソフトウェアの一見無形に思える仕組みでも、ソフトウェアデザインという段階を踏んで製造されているので、監査することは可能です。何も新しくシステムを組んだりする必要もありません。ソフトウェア査定概略はすでにできています。ソフトウェア開発はプロジェクトのようなもので、『さて、どのようにプロジェクトを進めていこう?』と考えてソフトウェア開発をしていけばよいのです。」
ソフトウェアデザイナーは20時間ぶっ通しで働く超人的な人間です。「プレッシャーのもと、時間もお金も足りない状態で、自動車の開発納期に間に合わせるために必死で戦っている。このソフトウェア開発の一連の流れを監査するのが我々の目的です。」とFrolich氏は言う。
「ISO/TS 16949ではすでに、デザインにおいても監査が必要だとされているが、ことソフトウェアに関しては、漠然としているため、ほとんどの監査員は注意を払っていない。」
ソフトウェアデザインプロセスは現状ではISO/TS 16949の監査項目に入っていないし、ソフトウェアデザインプロセスの自動車産業基準さえも確立されていないとFrolich氏は言及している。
「OEMでも、そういった基準が必要だと明言しているところは今のところない。」と彼は言う。「これまで、ソフトウェアデザインに関する取り決めはOEMとサプライヤーの二者間で行われてきました。」
OEMはサプライヤーに対しSEIの監査ガイドラインに従うことを要求することもあるとFrolich氏は言う。
SEIとは、アメリカ国防省の後援のもと、連邦政府財政支援を受けて設立されたCarnegie Mellon 大学の研究開発機関である。(編集者注:左記の関連記事参照。SEIはヨーロッパにSEIヨーロッパという機関を構えている)
「例えば、OEMがサプライヤーに『SEIガイドラインのレベル3をクリアするソフトウェアデザインプロセスを行って下さい。』というように要求するのです」とFrolich氏は言う。
ヨーロッパでは、ダイムラークライスラー社が第三者の監査機関にソフトウェアデザインの監査を行うように指示している。「アウディやフォルクスワーゲンも方法は若干異なるが、ソフトウェアデザインプロセスを何とか一貫して行おうとしています。」
ヨーロッパの90%の自動車産業が(フォードヨーロッパ、ルノー、ダイムラークライスラー、フォルクスワーゲン、アウディー)監査項目にソフトウェアデザインを組み込んでいくべきだと、草の根レベルでの声が上がっている。
「ヨーロッパでこのイニシアチブを発揮したのは、プレミアムブランドのサプライヤーでした。なぜなら、プレミアム車にはより多くのソフトウェアが組み込まれているからです。」とFrolich氏は指摘する。「新しいBMWの7シリーズには、1989年製のエアバス機よりも多くのソフトウェアが組み込まれています。」
「まさに今、ソフトウェアデザインに関する監査項目を早急にISO/TS 16949に組み入れなければならないと思います。」とDror氏は言う。「それしか方法はないのです。ISO/TS 16949がソフトウェア関係も含んだ監査できるのなら、それに越したことはないのです。」
ひとつ解決しておかなければならないのは、ソフトウェアのソースコードの独自仕様についてであるとMadsenは言及する。「サプライヤーの中には、自社独自のソフトウェアデザインの監査を拒否するところもあると思います。」と彼は言う。「きっちりとfail sefeの体制でもって自動車産業界のソフトウェア開発者が皆同等の厳しいプロセスを踏んでいくべきです。要するに、ソフトウェアの開発や使用用途にもっと注視していかなければならないということです。」
総括
車は進化し続ける一方でソフトウェアの不具合によるリコール数は増加するであろうとFrolich氏は考える。
「ある自動車企業の社長が私にこう言ったことがある『何百万、何兆バイトものコンピューターが一台の車の中で作動しており、その中で相互作用に不備が生じたとしても、我々にはどこに原因があるのかと一目瞭然に分かるわけではない。』」とFrolich氏は言う。「このような要因をコントロールすることが我々の最大の目的である。車にさまざまなソフトウェアシステムを組み込む前に、ソフトウェア個々の基準というものを確立しておかなければならない」
ソフトウェアデザインプロセスを統一することで、ソフトウェアサプライヤーの開発資金削減に繋がることは間違いないでしょう、とMadsen氏は語る。「お客様に、ソフトウェアが基準を満たしていることを証明できれば、信頼を得てスムーズに取引ができるだろうし、別途ソフトウェアデザインの確認作業を踏むことをしなくてすむ」
「最終的には、高いお金を出して監査を受けなければならない。でも、他にオプションはないのか?」とサプライヤーたちは聞いてくるだろうとDror氏は認識している。「リコール次第でたった一晩にしてブランドイメージが下がってしまう。そんな状況で監査にかかる金額を気にするよりも、リコールが起こらない環境を整える方が、今必要なことではないでしょうか。OEMはさまざまな分析の結果、ソフトウェアデザインプロセスの監査は必要であると認識しています。」
DNVはAIAGに対し、どのような役割を期待しているのか?Djurovicは次のように締めくくる。「AIAGは必要とされている基準を定める場であり、ソフトウェア部門で何が欠けているのかを把握する機関です。車にソフトウェアがどのように組み込まれていて、測定して、監視していくのかを考えなくてはなりません。自動車に使われるソフトウェアの集積化の増大に伴い、企業として取り組んでいくべきことであるのは間違いと思われます。近い将来AIAGがこの議題について取りまとめてくれることと期待しています。」

SEIがソフトウェアへの挑戦に取り組む
SEI(The Software Engineering Institute)は、アメリカ国防省の後援のもと、連邦政府財政支援を受けて設立されたCarnegie Mellon 大学の研究開発機関である。SEIの目的はソフトウェア工学技術において先導的役割を担い、新しいソフトウェアを世に送り出していく役割をすることである。
ソフトウェアを使用する製品でサービスを行っている企業や組織にとって、高品質の誤作動しないソフトウェアを使用することが使命であるとSEIは言う。企業間の競争は主にソフトウェア開発技術に左右されている。そこで、SEIのミッションは異なるソフトウェアの集積をいかに安全に行うかである。


